スマホ首・ストレートネックの治療
現状:
首こり:
スマホ首の性質:
ストレートネック:
痛みの部位:
スマホ首・ストレートネックを訴えていらっしゃる患者様の多くは、眼精疲労や精神的ストレスで異常が出やすいと一般的に捉えられている後頭部に加えて、首の付け根(~肩)、あるいは上背部に痛みや不快感を感じて来院されています。
当院で診てきた患者様のかなりの割合で、両側ではなく左右のどちらかに痛みを感じていらっしゃるのが特徴です。
肩こりとの違い:
肩こりの場合は、関与する筋肉が少ないこともあり凝る原因筋が正確に理解できていれば施術自体は比較的単純で、しかも腰のような筋肉の厚みはないので鍼を用いなくてもマッサージでたいていの場合解消できます。
しかし、首こり・スマホ首・ストレートネックの場合、原因筋が細かく、深く、しかもかなり硬くなっていることが多いという特徴があり、ある一定以上の悪さになると、指(マッサージや指圧)や、運動療法、整体などのストレッチ系の操作ではほぼ不可能な状態になります。(図4、図5)
原因:
(図1)
( Travell & Simons, 1999より)
頸椎7・胸椎1番辺りを支点にして頭が前に倒れる構造になっていますが、右図(D)の場合、大して筋力を使わずに済みますが、左図(C)のような場合はテコの原理で頭の重みを引っ張り続ける筋肉と椎間関節・椎間板に相当負担がかかることになります。前傾の度合いが強くなるほど負担が増していきます。
解剖図で確認すると、(図2)は僧帽筋をめくった状態、(図3)はさらにその下層の筋肉ですが、これらのいわゆる頸部深部筋群にダメージが蓄積していくるとポリモーダル受容器が痛み信号を発し始め、痛みや不快感を感じるようになります。
肩こりなどを含めたすべてのコリに共通することですが、初期の時点であれば、運動したりストレッチをするなどすれば血流が改善するので痛み物質も血流に乗って流されて無くなるので、ポリモーダル受容器の痛み信号の発信も止まります。
しかし慢性化してコリがかなり硬くなると周りの世界から完全に閉ざされた状態になるので、温めたり運動やストレッチなどでは血流は回復できなくなってしまいます。
(図2): 僧帽筋をめくった状態
(図3): さらにその下層の筋群
(図4): 断面図
断面図で確認すると(図4)のようになります。
(図5): エコー画像
(図4)の深部筋にスポットを当てたエコー画像は(図5)のような感じです。深部筋の一番深いところまで5cmくらいあります。
鍼治療の有意性:
深い部位は、標準的な体型の成人男性で深さが4-5cmほどあります。この深さになると有効な刺激を入れるのに指(マッサージ・指圧など)では全く無理だというのはお分かりいただけると思います。
これらの小さな筋群(インナー・マッスル)は、目に見える派手な”運動”時にではなく、バランスや姿勢の維持に使われる筋群で悪い姿勢で長時間過ごすとダメージが蓄積されていく場所です。
これらのコリは短縮して頸椎を引っ張り合い椎間板を圧縮する力として働いたり、前弯を失わせてストレートネックにさせるようになります。長年に渡りその状態が続くと椎間板の変性、変形性頚椎症、椎間孔の狭小、神経根症状(腕・指の痛みやしびれや筋力低下)へとつながっていくと考えられます。
特筆すべきは、とても小さな筋肉にもかかわらずひどく凝っている方の場合、他の部位ではまず見られないくらい硬くなっていることが多々あるという事です。
凝っていない筋肉が「プリンや豆腐を箸で刺す」場合だとすると、とても悪いコリは「硬めの羊羹や半分乾燥したチーズを箸で刺す」場合をイメージしてください。ちょうどそのような感触が鍼先から得られます。深部筋をはじめ周囲の軟部組織は完全に酸欠状態にありますので異常を伝えるポリモーダル受容器の感度が非常に高くなっている状態です。(このような鍼先の感触の時、受けている患者様はかなり響きが強くなります。)
このような鍼先に伝わってくる感触から分かる異常な硬さから判断すると、悪化した首こりに関しては、ストレッチや整体などの体表外からの操作で緩めるのはかなり難しいと考えたほうが良さそうです。
実際に他でいろいろと試されて来院される方々が同様の意見を持たれ、患部に直接届く鍼の有用性を認めておられるのを耳にします。
肩こりや背中のコリなどはマッサージをはじめ有効な治療法がいくつもあると思いますが、首こり(スマホ首)や腰の深い部分での重度のMPS(筋筋膜性疼痛)を根本的に治す手段として、物理的に直接アプローチできる鍼はダントツに優れた手段だと言えます。
最も典型的な治療の進め方
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*状態がそこまで悪くなかったり、他の治療で表層筋に問題がなければ独立したステップ1の段階を設けずにダイレクトにステップ2の段階に入る。
* 症状の悪い場合、刺激が入ったことでしばらく筋肉痛・違和感、場合によっては一時的に余計悪化したかのような感じになることもある。(なぜそれが生じるか、そのとき何が起こっているかについては ☞「 鍼は痛いのか?-上手・下手との関係」のコリが刺激された時の神経性炎症ー治癒過程の話を参照 、他、 ☞ 「ポリモーダル受容器とは? 」、☞「鍼灸マッサージ治療の後の筋肉痛・だるさ」 等を参照)
*普段、絶対刺激の入らない部位で悪いなら悪いなりにバランスが取れていた部位が刺激されるので、治療始めの頃は感覚が暴れるような感じで、かえって悪化したのではないかとさえ感じる時期を経験される患者様もいらっしゃいます。(ただし、その場合でも首のツッパリ感からの解放感や筋肉自体の柔らかさは感じられる。)
治療が進んでくるとそういったこともなくなりMPS(筋筋膜性疼痛)が取れてきます。
後頭下筋群の治療については ☞ 首コリの治療