使用する鍼について :主に以下の鍼を使用します
1: 極細の鍼
2: ノン・シリコン鍼
1:基本的に極細の鍼を使用して効果を出しています
鍼の太さ(直径)は、日本では1番(直径0.16mm)、(2番)0.18mm、(3番)0.20mm、(4番)0.22mm…といった具合に決まっています。
中国鍼が太いことで有名ですが、dry needling や trigger point 療法関係の論文やテキストなどの文献から明らかなように、欧米でもかなり太い鍼を使用しているようです。(細い鍼よりも太い鍼の方が効果が高い、という論文も散見されます。
確かに、この主張は、ポリモーダル受容器の性質から考えると正しいと言えます。
しかし、そのことが即ち、太い鍼を使用しないと高い効果が出せない、ということにはならないことに注意が必要です。)詳細は 鍼の太さについて をご参照ください。
日本で使用する鍼は外国(中国・韓国、欧米など)と比べて細いことで有名で1番、2番、3番鍼あたりが多く使用されている印象があります。私も初期の頃は1番、2番、3番鍼を中心に使ってきましたが、コリの芯にまともに当たった時に効きすぎてしまうことをどうやって防ぐことができるか、というのがずっと課題でした。
その一つの解決策として状況が許す限り極細の鍼を使用しています。極細の鍼というのは、よく「美容」鍼に用いられる鍼です。
0番鍼といって、01番(0.14mm)、02番(0.12mm)、03番(0.10mm)がありますがたいていの場合はそれらで十分です。平均的な人の髪の毛と同じかそれよりも細くてふにゃふにゃなので、扱いが難しいですが多くの部位はそれで十分です。
例外は、1.腰部などで筋膜が厚くなってしまっている患者様の場合や、2.コリが硬すぎて鍼が負けてしまう場合、3.臀部や腰部で「深さ」が求められる場合は(長い極細鍼は生産されていないため)状況に応じて番手を増やしていきます。(2番鍼が当院で用いる一番太い鍼です)
理想は、最小限の刺激で最小の響きを出して、そこから鍼の操作で(リモコンのボリュームを上げて音量を上げていくように)響きの大きさと持続時間をコントロールできることです。状態や感じ方が異なる生きている人間の身体を相手にコンスタントに実現させるのは非常に難しいことですがそれを目指して日々治療にあたっています。
*一般に、日本の鍼灸院で使用される鍼は、諸外国で使用される鍼と比べて「細い」こと(*そして手法としては「浅く」刺すこと)で有名です。細い鍼を使って効かそうという点が繊細な日本人(施術者も患者も含めて)らしい美しいスタンスだと思います。
(*浅い鍼の効果と限界については浅い鍼・軽い刺激の治療をご参照ください)
(参考)鍼の太さについて
2:基本的に「ノンシリコンの鍼」を使用します
鍼先の形状についてでご紹介いたしましたが、各メーカーごとにそれぞれの考えに従って鍼先の形状に工夫がなされています。しかし、
実際のところ、鍼先の形によって切皮痛に大きな違いがあるか、というとそこまでの違いはないように思われます。
むしろ、大きな違いがあるのは、鍼先に刺入時の抵抗を無くすためにシリコン塗布されている鍼と、そうでないノン・シリコンの鍼です。
国内大手鍼メーカーもほとんどがシリコン塗布した鍼を販売しており、使い勝手の良さから多くの鍼灸院で使用されています。
安全性の面を気にしてシリコン塗布の鍼を使用しない鍼灸院もたまにあるようですが、使用されるシリコン自体は医療品としての安全性が確かめられたうえでのものですし、そもそも病院で不通に使用している注射針などもシリコン塗布されている訳ですからことさらに鍼について安全性を気にするのはどうかと思います。
むしろ、当院でシリコン塗布の鍼の使用を嫌うのは滑らかに入りすぎて刺入の際の情報(筋膜に触れたとき、コリの硬結の程度、筋肉内を通過するとき、次の層の筋肉に届いたとき等)がほとんど消されてしまうからです。
例外的にシリコン塗布の鍼を使用するのは、皮膚組織や筋膜が硬すぎて入らない場合や、治療初期でポリモーダル受容器の過敏度が異常に高い場合くらいで、使用場面は1%もないです。
両者の治療効果の差異の有無について研究がなされているか分かりませんが、経験的には確実に通常の鍼の方が効果が高いです。
また、低周波通電する場合、シリコンは絶縁体ですのでシリコン塗布仕様の鍼を使うのはまったくナンセンスです。この場合も通常の鍼でなければなりません。