むち打ち症・寝ちがえの治療
両症状を併記して記載することに違和感を覚える方があるかもしれませんが、これらの機序と有症の状況には重なる部分がありますので合わせてご紹介します。
むち打ち症は、自動車の追突事故などが有名ですが他にもスポーツや転倒など何らかの原因により首に瞬間的に不自然な力が加わることで”頚部の軟部組織”を傷め首や全身に様々な症状が発生している状態のこと言います。
衝撃の程度により”頚部の軟部組織”の損傷具合には様々な程度があります。鍼灸マッサージなどの手技療法によって明確に効果を期待できるのは筋肉・靭帯・関節包の損傷にとどまる場合です。神経組織(神経根・自律神経・脊髄)の損傷がある場合は、ある程度の効果(当然この場合、筋肉・靭帯・関節包なども一緒に傷めていると考えられるのでその部分から出ている痛みや不快感などに対する効果)が出るかもしれませんが症状を根本的に解決することは難しいと思われます。
*参考)むち打ち症についてのガイドライン ☞ Guidelines for the Managemanet of Whiplash-Associated Disorders
寝違えについては受傷における時間的な条件(瞬間的な外力ではなくもう少し長い時間の外力)が異なるだけで軟部組織の状況としてはむち打ち症と類似しています。つまり、筋肉・靭帯・関節包が長時間、伸ばされ続けてゆっくり捻挫や筋違いを起こしたような状況です。神経組織まで傷めることは考えにくいのでこちらの方は鍼やマッサージの効果が十分期待できます。
寝違えの場合、傷める筋肉の種類がむち打ち症のそれよりもバリエーションがあります。寝ていた体勢により斜角筋や胸鎖乳突筋、などに痛みが出ていることもあります。
鍼・マッサージ治療
急性期(受傷後、数日間程度)は首の奥深くの筋膜・筋肉や靭帯に強い炎症が起こっているのでこの期間は首に対する手技療法(鍼・マッサージ)の介入は控えるべきです。
ただし、急性期であっても頚部の浅い筋群や周囲(肩・背中・上肢・胸など)は過緊張やコリを取るための治療は可能です。
急性期を脱した後は深部も含め施術が可能となります。深部については鍼が必須です。特に頸椎の5~7番(~胸椎の1番)あたりの椎間関節付近を入念に施術することで安静時痛・動作痛ともにかなり軽減することが多いです。下図参照
*頚部深部の治療については ☞ 首コリの治療 参照